時間とCPUパワーの無駄遣い。

 5,000曲ほどのエンコ済みライブラリを(試行錯誤含め)約2週間かけてノーマライズ終了。
 そんな素晴らしいタイミングでMP3GainAACにも対応していると知る。iGainのノーマライズに不満がなければそれも気にならないところだが、ファイル本体で調整するMP3(/AAC)Gainに対してiGainはiTunes側のボリュームコントロールを(比率で)弄ってるだけなので、iPodに転送し再生ボリュームを上下すると音圧差にもズレが発生する仕様。iGainのBBSでもその旨作者氏が触れてたりして情報収集力の低下っぷりにorzする。
 なんかこうやってれんものを感じてしまうのだけど、さすがに今すぐノーマライズやり直す元気は無い。前世紀に128kbpsでエンコしたままのMP3をAACで再エンコする際の宿題として取っておくことにする。しっかし落ち込むなー……。


 ところでノーマライズ作業をしていると、「最近のCDは音圧がギリギリまで上げられてるのかなあ」とか「クリップさせるのが最近のオルタナティブと呼ばれるジャンルではデフォなのかしら」なんてアバウトな感覚が数字に裏付けされて面白い。
 もちろん背景には「(デジタルマスタリングなどによって)ダイナミックレンジを見極められるようになった」ってのがあるんだろうけど、「聴き取れないほどのMCを数十秒続けたところで、唐突に轟音を響かせる楽曲」が少なくないことを鑑みるにやはり「そんなことでしかインパクトを与えられないと思っている阿呆なエンジニア」も少なからず存在するのであろうなあ……などと思ってしまったりするのでした。
 ていうかアレにはもはや悪意を感じるよ。冗談抜きで訴えるならAppleじゃなくレコード会社やアーチスト側じゃないかしらん。聴かんのが一番だけど。
 でもそういった「こけおどし」からは遠そうなTOTOですら、年代とアルバムの平均音圧を比較してみるとこんな調子だったりする。例によってWinIE限定ソート表(要JavaScript)。

アルバム ゲイン調整値 アルバム音圧 リリース年
The Seventh one +100%% 88.24dB 1988
Fahrenheit +100%% 88.53dB 1986(1990再発)
Hydra +73%% 90.25dB 1979(1990再発)
Turn Back +68%% 90.48dB 1981(1990再発)
Isolation +43%% 91.90dB 1984(1990再発)
IV +27%% 92.93dB 1982(1996再発)
Kingdom of Desire -8%% 95.71dB 1992
XX -10%% 95.89dB 1998(過去のレアトラック)
Tambu -16%% 96.51dB 1995
Mindfields -22%% 97.13dB 1999
Through the Looking Glass -32%% 98.31dB 2002
Falling in Between -35%% 98.70dB 2006

 とある事情により宇宙の騎士はパス。気にすんなー。
 で、この表が何かの役に立つかというとノーマライズ終了してしまった今となってはあまり関係なかったりして。しょせんPCとポータブルオーディオで聴く音源だしねえ。あまり気にしても始まらん、のかも。
 そもそも95dBでノーマライズしといて何を、という気も。自分の耳もずいぶんくたびれて来てるんだよな。高校時代には既に15KHzより上が聴き取れない自覚があったし。だから大学入って気兼ねなく音を鳴らせるようになってからは意識的にヘッドホンを使ってないのよ。ポータブルオーディオも(たぶん)割と音量上げない方だし。
 「自分のヘッドホン音量が適正かどうか」なんてのは、なかなか実態として認識しづらい。普段聴いている音量で他人にヘッドホンを装着させ「どれほど音漏れがあるか」を確かめる、なんてことは普通の人ならやったことあるまい。それは実にインディビジュアルな情報だ。
 そして最近のオーディオ機器は(ポータブルに限定せず)絶対的なボリューム位置を把握しずらいものが多い。昔のように「何時の位置にバリコンが」というわけにはいかず、デジタルボリューム黎明期のように「全何セグメントのうち幾つめ」という指標すら提示されない機器が増えてきている。
 昔はカセットテープのダイナミックレンジが狭かったから、録音時の音量調節はエンドユーザにとっても親しみ深い作業だった。今は変化するCDの音圧にその場その場でボリュームを調整するだけだ。となれば、聴取ボリュームは周辺環境や精神状態に依存し、その偏りを自覚する機会も減る。
 難聴の原因がそんなところにある、という発想は決して間違いじゃないのかも。だからってApple訴えるかーとは思うけどさ。これに限らずあの国のヒトビトってのは自分が愚かだと喧伝するのに躊躇がないんかしら。