世紀末微懐メロ伝説その53。

Demolition 23Same Shit Different Day
DEMOLITION23.
“Demolition23.” [1994]

 それまでの何もかもを手放して、身ひとつになったのに開放されず、ショウウィンドウに映る眉間の皺に吐き気をもよおしながら、でもロンリーハートのように流れに逆らうこともできずにいた。

 色んなものを見ないようにしていた1994年、唯一買った新譜がこのアルバム。

墓標のようにたたずむ神戸のビル街
それを珍しがる旅行者はみんな
俺の街から出ていけ

 何度も何度も繰り返し聴いたはずのこの曲が、翌年はそんな風に聞こえるだなんて思いもしなかった。神戸の街を離れたことを、結局僕は丸4年も悔いて過ごすことになる。
 「なぜ僕はあの時あの場所にいなかったのか」と答えのない自問を繰りかえし、そのくせ「お前が残ってたら真っ先に死んでるよ」と茶化す言葉には曖昧な笑みを返しながら。

 このアルバム以後、特にソロアルバムではマイケルのパンク志向が明確に打ち出されていく。ロックに懲りたということなのか。先のエルサレムスリムともども黒歴史となっているこのアルバムでは、特にやるせなさが炸裂している。それを裏打ちする訳詞がまたすげえ。

こいつを陰謀だと考えたくはないけど
まともなやつは誰も生きちゃいない
非道徳的多数が俺の傷を侮辱するばかりさ

 パンクの訳詞はこうでなきゃ。しかもそれにつく邦題(ライナー内のみ)がこれ。

  1. 何んにもうまく行きゃしない
  2. ハマースミス・パレ
  3. 屑こそ生き延びる
  4. 機能障害
  5. 何もすることがないから
  6. おまえに愛されたい
  7. 君は僕を十字架にかけた
  8. 日は違っても同じ糞
  9. 絶滅しゆく種
  10. デッドタイム・ストーリーズ

 素敵すぎ。いっそこのままの邦題で出せばよかったのに。
 元気がいいのはカバーだけで、オリジナル曲はどれもこれも鬱屈しまくり。そこがまたいいんだ。

 いろんな意味で忘れられないアルバム。たとえ歴史から抹消されようとも。