世紀末微懐メロ伝説その32。

Jerusalem SlimRock’n’roll Degeneration
JERUSALEM SLIM
Jerusalem Slim [1993]

 アルバムが出たときは既に相方が離脱、泣きながら仕上げたけれどリリースは永らく日本国内だけだったという不幸を絵に描いたようなモンロー様の黒歴史からロケンロールなオープニングチューン。題するは「ロックの堕落」。かーっ、こういう見得を切らせるとマイケルに敵う奴ぁいねえよな。
 その相方ことスティーブスティーブンスは脱退直後に仇敵ヴィンスニール[ex:モトリークルー]のソロアルバムへと参加。またそのアルバムがヴァンヘイレン脱退直後のデヴィッドリーロスとタメ張るほどいい出来で(売れ方はさほどでもなかったが)、この救われなさ加減は一体なんなんだろうと思ってしまう。


 前作Not Fakin’ Itでは弟分であるアクセルローズ[ex:ガンズ&ローゼズ]の乱入も手伝ってそこそこメディアへの露出も高かった。シングル「Dead, Jail, or Rock’n’Roll」はMTVでもバンバンかかったし、タイトル曲は本邦のツアーの様子をまとめた日本版オリジナルクリップが作成されたりもした。
 しかしさすがにリリース時点で実態のないバンドをプロモートすることもできず、「一応切り離して考えてね」来日ツアーでもこのアルバムからの曲は演奏されなかったと聞く。その後マイケルはやはり元ハノイのベーシストであるサムヤッファとDemolition 23.を結成、アルバムを一枚残すもまたギタリストが事故。盟友ナスティスーサイドを擁したツアーを行うも早々に解散してしまう。
 パッとしない数枚のソロを経て彼が選んだのはハノイの再結成だった。アンディマッコイとの新アルバムは久しぶりにエネルギッシュな好盤となったが、ヴィンスの飲酒運転の巻き添えで死んだオリジナルドラマーのラズルをどうしても思い出してしまう。後にツアーなどでサミーやナスティもスポット復活しているという話を聞くと余計に。
 ヴォーカリストのタイプとしても、音楽性においてもまるで相似点はないはずなのに、色んな絡みのせいでヴィンスと比べられること自体が彼にとっては不幸なのかも知れない。でも大好き。最新のソロアルバムではそういった有象無象のしがらみを吹っ切るかのごとく、バラエティ豊かな楽曲を楽しげに歌っているのが救いかな。